何の気なしに読んだ本でしたが、深く「片付け」や「家族」「人生」について考えさせられた本。
私にとっては読み応えのあったいい本でした。
コミックなのですが、漫画家でありライターでもある井上能理子さんの分析力が光る自伝的な片付け本です。
うつになって実家に戻ったものの、待っていたのは荒れ果てた我が家。
働きすぎてうつになりかけ、母の勧めもあって実家にに帰った作者。しばしの休息をとるつもりでいたのに、戻った実家は、まさに汚部屋と呼べる荒具合。
この本はコミックなので家の汚れ具合がありありとイラストで描かれていて、ゾッとしました。まさに病的なまでの汚部屋です。
でも、母も妹も弟も、誰も掃除する気はないらしく(そうでないと汚部屋にはなっていないはず)、きれい好きな作者、能理子が耐え切れず大掃除を始めるというストーリーです。
片付けテクニックが秀逸。
掃除好きな能理子の紹介している掃除テクニックが、生半可なものではなくプロ肌質。この本のために取材したもの、というより絶対に自分でやっているんだろうなというリアリティがあります。
使う洗剤や道具も気合が入ったものですし、書店に勤めていた頃に身につけたという本の並べ方など、どれも合理的。甘さは一切なし。でも、嫌いじゃないかも。
生き方と片付けの関係を考えてしまう。
家のオーガナイズがうまくいっていなかったように、母、弟、妹がそれぞれ上手くいかない人生を抱えて生きていました。
人間って、みんな完璧じゃない。だから上手くいかないのだけれど、それが汚れ放題の家の様子と重ねあわせられると少し悲しくなってしまいました。
家がキレイになれば家族も変わってくれるかも、と主人公は一生懸命に家を掃除するのですが、それは強権的で何でも上手くこなす能理子の理論を押し付けていただけなのかもしれません。
結局、疲れきった能理子はまた家族のもとを離れて一人暮らしをするのですが、片付いているけれど何も置いていない、生活感が一切ない自分の部屋にも問題があるのではないかと感じ始めます。
そして、その部屋で唯一暖かい雰囲気のもの、無計画で片付けられない母がくれた犬のぬいぐるみを見て、なにかを思うのです。
「片付けって、なんだろう?」そんなことを考えさせられる一冊です。