英語圏での読み書き指導の歴史。ホールランゲージとフォニックス

英語圏での読み書き指導の歴史。ホールランゲージとフォニックス

英語圏の読み書き指導の歴史は、教える側として知っておいてもいいなと思う場面があって、2016年3月に参加したジョリーフォニックス研修の資料やその他の参考資料を見て、自分の中で整理しています。

なるべくシンプルに書くことを心がけました。年代や捉え方は資料によって違うのですが、その理解はちょっと違うよ、というところがあれば、お教えくだされば助かります。

1970年代前半まで。”look and say”

1,970年代前半の頃まで、英語の読み書きは”look and say”という手法が一般的で、見て覚える、つまり暗記に頼った覚え方が主流でした。

イギリスについて言えば、教科書のようなものはなく家庭で大人が繰り返し本を読んでやることで、読むことを教えていたようです。

私達が使っている日本語は文字と音の関係が比較的規則的ですが、英語は同じ音でも何種類もの異なる綴り方(rain,make,trayは全て同じ発音/ei/を含む)があったり、規則に合わないサイトワードと分類されるものもあります。

十分に本を読んでもらう等のサポートがなければ読み書きの習得は難しいと考えられますし、記憶が上手くいかない、音の操作が苦手、形の認識が弱いなどディスレクシアの要因になりうる学習上の弱みがある場合は困難が大きかったのではないかと思います。

1970年代から1990年代ごろ。”whole language”

ホール・ランゲージとは何かと検索すると、このような記述が出てきますが、少し分かりにくい気がします。

ホール・ランゲージ(英:whole language)とは、子供が意味に集中するべきだと強調する、読み書き能力育成に関する考え方のことを指す。この考え方は、「読むこと」と「綴ること(spelling)」のための指導を重視するため、「読むこと」と「書くこと(Writing)」を指導するフォニックスを基準とした方法と対比される。そのため、ホール・ランゲージの考え方は基礎・基本を重視する教育学者により非難を受けている。

ホール・ランゲージ – Wikipediaより

もう少し噛み砕いて書きます。

ホールランゲージはそれまでの英語教育(特に読み)の改革を目指して始まった草の根運動で、言語の学習は全体から部分に向かって行った方が自然で習得しやすいという考え方です。この全体から部分へというところから、ホールランゲージ・アプローチという名前がついています。アメリカでは1980年頃のものと書かれた資料もありました。

より自然な言語習得に近い形で教える、つまり、たくさんの本や文字情報などに自然に触れることにより、その文脈や意味、関連した体験を活用しながら、読みを習得していこうというアプローチです。

今でも、文法を教えるためだけに用意された必然性のない文や、細かく要素に刻まれた文、目的もない文章を見かけますが、そういった切り刻まれた言葉からの学習はかえって効率が悪いという考え方です。

素材が、学習者にとって面白く興味を引く対象であり、その文脈の中で自然に言葉の意味や使い方を学んでいく学び方であれば、それはホールランゲージ的なものと言えます。例えば、多読や英語落語などにもホールランゲージの要素はあると思います。

この時代、アメリカではホールランゲージとフォニックス(単語を細かく分解して組み立て直すため)というのは対立概念として激しく議論がなされたようですが、今は対立するものではなくお互いに共存する考え方として捉えられています。

1990年頃から。 ”phonics method”

アメリカにおいては、ホールランゲージかフォニックスかという議論が1世紀近く行われていたのですが、フォニックスが英語の読みの学習に効果的だと次第に認められてきました。

1998年には、米国学術研究会議が、効果的な読みについての研究報告書”Prevention of Reading Difficulties in Young Children”(Snow, Burns, and Griffin, 1998)が提出されました。「体系的かつ明示的に指導されたフォニックスは、ホール・ランゲージにおける embedded-phonics や、まったくフォニックスを使わない指導法より有効である」とした結果が、フォニックスの広まりにとって、大きな出来事だったと思われます。

フォニックスには、幾つかの種類がありますが、アナリティカル・フォニックスとシンセティック・フォニックスに注目して考えたいと思います。

アナリティカル・フォニックスは単語からそれぞれの音を分析するやり方、シンセティック・フォニックス(アメリカではブレンディング・フォニックスと呼ぶ)は個々の音と文字を学び、それを統合して単語を作るというやり方です。

イギリスにおいては、2007年から公教育の場で100%シンセティック・フォニックスが使われ始めました。

繰り返しになりますが、現在はホールランゲージとフォニックスは対立するものではなくお互いに補いあうものだと捉えられています。

まとめ

初めてフォニックスを知った時、「こんな風に英語の読み書きを習いたかった。」と心底思いましたが、英語圏でもフォニックス自体が採用されてきたのが1990年以降と知って、それなら日本で普及してなくても仕方ないと納得したものでした。

またフォニックス自体も万能ではなく、単語の意味や文法は別に学習しなければなりません。そういう意味でも、ホールランゲージがどういったものか、もう少し詳しく勉強してもいいなと思っています。

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ニコ

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