「神経文字学」を読みました。文字の理解をお医者様が論じた本です。
読み書き指導のヒントになりそうな事が書いてあります。
読み書きする時の漢字の難しさ 漢字のなりたち
漢字は次の4つに分類することが出来ます。
- 象形ーーー元の形を簡単にしたもの。絵から発展したエジプトのヒエログリフなどと同じ意味を表す字。「山」「川」など。
- 指事ーーー抽象的な概念を形にしたもの。「三(棒が三本だから)」「上」「下」など。記号っぽいです。
- 会意ーーー2字以上の漢字の字形・意味を合わせて作られたもの。「明(日と月がいっしょで明るい)」「信」など。
- 形声ーーー意味をあらわす偏(ヘン)と音をあらわす旁(つくり)から成り立つ。「晴」「清」(どちらも同じセイという音をあらわす旁を持つが、意味をになう偏が違う)
①②③は簡略化した絵のようなものとも言えて、④の形声タイプより単純ですし、ビジュアルで指導するのに向いている気がします。
しかし漢字の8割は④の形声文字で占められています。
④の形声タイプの漢字は、「音の想起」と「意味の想起」、「形の想起」が関わってきます。音、意味、形、このうちのどれかの操作に苦手があると難しいのかもしれないと思いました。
漢字の書字の間違いのパターンについて書いてある。
漢字を書くときの間違いパターンは以下の通りです。
- 同じ音の漢字を間違って使う。(社会→社回)
- 形の似た漢字を間違って使う。(季節→委節)
- 類似した意味の漢字を使ってしまう。(潜伏→潜存)
- 組み合わせタイプ。①+②(意識→意織)、①+③(加齢→過齢)、②+③(持続→待続)①+②+③(浸透→侵透)
- 順番を間違って使う。(危機→機危)
- 正しくない偏や旁を使う。(実在しない偏、旁を使う)
本書では、これらの間違いの原因には「音」「意味」「形」が同じくらい関係していると言っています。
読み書きするときのアルファベットの難しさ
対してアルファベットの読み書きの間違いでは、音と表記(つづり)が1対1ではない事が原因とされます。(注:見え方に読み間違いの原因があることもあり、原因は様々あります)
確かに「読む」、すなわち単語や文字を見て音に変換する時(decoding)に、音に幾つかの候補があれば、それだけ間違いの確率は増えます。
また、「書く」、音や音の塊から文字や文字列に変換する段階(encoding: spellingに相当)でも綴りの候補が幾つかあると、やっぱりそれも間違いの原因になります。
まとめ
日本語はひらがな、カタカナなどの表音文字に加え、漢字という複雑な成り立ちの文字を使っています。そのせいで英語のディスレクシアとは出現の仕方が違うとは知っていましたが、この「文字神経学」を読むことで、少し理解が深まりました。
英語は音を表す表音文字ですが、そのルールが複雑です。英語に音韻性のディスレクシアが多いとされるのは、そういう文字の特性の違いがあるからなんですね。
この本を読んだからといって、すぐ何かの役に立つという事ではないのですが、漢字の間違い方の特徴からその子の苦手な経路を推定することはできるかもしれません。
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