先日、大阪でうまく日程が合ったので英語発音の指導者向けワークショップに参加してきました。今回はsとshとchの3つの音を3時間かけてやるとのこと。細かく丁寧な指導がしてもらえそうです。
どんな表現で伝えたら生徒さんは混乱しないのか?どんな順番で教えたらいいのか?
他人に対して英語の発音を指導するのは正直とても難しいと思います。だからこそ色々な方法を学びたいと思います。
今回のワークショップで、あぁ、そうだ!と納得した事について書きたいと思います。
発音指導では、どんな情報を与えて指導しているか?
一般に発音指導をする際は、次の情報をメインに与えることが多いです。
- モデルになる音を出している時の口の形を外から見せる
- 横から見た口の形の図を見せる
- 英語の正しい音を聞かせる
それに加えて日本語で解説を入れるスタイルが多いのではないかと思います(shなら「シーッ、静かに」という時のシーッという音など)。
平たく言うと、聞いて真似して、ヒントを少しというスタイルが一般的なのです。でも、音の聞き分けが苦手な生徒さんなど、それじゃ上手くいかないことも結構あります。
新しくVAKILという言葉を覚えました。
今回初めて聞いた言葉で、VAKIL(バキル)というものがあったのですが、これは、どの方法を使って生徒に物事を習得させるか?の頭文字を合わせたものです。このVAKILを覚えておいて、自分が何を使って生徒さんに教えているかを自覚していることはとても有益だと思います。
- V……Visual 見せる。視覚情報を与える。
- A……Auditory 聞かせる。聴覚的情報を与える。
- K……Kinetic 体を使う。触感、動き、体感などを使って情報を与える。
- I……Imagination 想像力を使う。今回の場合は口の中がどうなっているか想像させる。
- L……logic 論理的に考えさせる。物の仕組みや道理を筋道立てて考える。
例えば、今日の指導では「s」の音は口の中はどうなってる?と生徒さんに問いかける場面があったのですが、ほぼ閉じている口の中を自分で見ることは出来ないので、生徒さんは「ああかもしれない」「こうかもしれない」と想像し始めます。
もしかしたら「歯は閉じている」「舌の先は歯に当てているわけではないな」など、キネティック(体感)を使って確認しているかもしれません。
また別の場面では、「声帯が震えていないから無声音だ」と物理的な道理と、体感を使って納得する時もあります。
論理と体感、想像力を使った指導も加えると、生徒さんの理解が進みそう。
発音指導においては、このようにどの経路を使って教えるかということについて意識したことはありませんでした。
発音の指導で、生徒さんがなかなか上手く発音が出来るようにならない理由の1つは、モデルの音を聞いた直後は聞いたまま真似するのがそんなに難しくないから、という話も出ました。聞いて真似することと、少しの日本語でのヒント(shなら「シーッ、静かに」のシーッの音にあたるもの)だけでは、モデルの音がなくても、自分一人でキチンと発音できるところまで持っていくのが難しいのです。
確かに、その場では上手く出来て、先生にもOKと言われたのに、数日経ってみると「あれ?出来てないね」というのは、英語教室あるあるだと思います。
普段から多感覚で物事を教えるというのは意識していたのですが、こと発音に対しては聴覚と視覚にかなり偏った指導だったなというのは目からウロコでした。
今回、VAKILを知ったことで、この人には論理を多めに……とか、この人は体感を使って技術を覚えるのが得意そうだから体感を使って教えよう、という風に相手に合わせられるようになりそうです。
VAKILを知って、ちょっと自分の指導スキルが上がりそうで、ホクホクです。
論理や体感、想像力も使って多方面から情報を与えてあげて、自分で「このように体を使うと、目指す音が出る」と自分で目指す音が出せるようにしてあげるのは本当に大切だと実感したワークショップでした。
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