認知について考えるうちに「見え方」を気にするようになった。
英語を教えていてアルファベットを覚えるのに苦労する子どもさんに出会ったり、速読って何だろう?と学んでいくうちに、認知についてもっと知りたいと思うようになり、とりわけ人がどのように物を見ているかも意識するようになっています。
認知とは、人間などが外界にある対象を知覚した上で、それが何であるかを判断したり解釈したりする過程のこと
カラーユニバーサルデザインのセミナーに参加しました。
先日、私が加盟しているインテリア産業協会が主催するセミナーでカラーユニバーサルデザインの講座があったので参加してきました。講師はNPO法人北海道カラーユニバーサルデザイン機構に所属する本間純子さんです。
年を取ると、黄色っぽく見えづらくなる。
前半では加齢によるモノの見え方の変化についてですが、普段あまり意識していなかったことなので、とても興味深かったです。
色の見分けは20歳位をピークとして、水晶体が黄変することや、錐体細胞の機能低下によって青系の色が見づらくなります。実例として調理中にガスコンロの火が服に燃え移る着衣着火の事故を紹介されていました。ガスコンロの炎の青色が目の加齢によって見分けづらくなり、炎が実際よりも小さく見えてしまいがちなのだそうです。
インテリアを計画する上で白熱灯の黄色っぽい光源は温かみがリラックス効果があるのでよく採用されますが、高齢になってくると昼光色と呼ばれる青みの強い色の方が青や黒の色の見分けに対しては楽になるということでした。
父の家の階段が心配になった。
もう一つ印象に残ったのは、階段の段差の見分けの難しさの実例です。私にも高齢の父がいて父の家の階段は大丈夫かと心配になりました。講義中に見せていただいたスライドを元に再現してみます。ちょっと知り合いにお願いして、お宅の階段を撮影させていただきました。
▼通常に見えているであろう階段。上階から見下ろすとそれでも少し段差は見分けづらいです。日中で明かりが入ってこの状態ですので、夕方や曇の日はもっと見づらいかもしれません。高齢になって、足が上がりにくくなったり筋力が弱ってくると転落の危険も考慮しなければと思います。
▼黄色くフィルターをかけて加工しました。どの程度視界が黄変し見づらくなるかは個人差があるでしょうが、年齢を経るとこのように見えていく傾向があります。さらに段差が見づらくなってしまいます。
▼段鼻にコントラストをつけた場合。こちらは私がパソコンのソフトで階段の段鼻に白い線を付け加えたものです。このように暗い色の上に明るい色を組み合わせるなどしてはっきりと境を示すことによって、ずいぶん見やすくなります。駅や公共の場などでは段鼻の色を変えているのを見かけますが、家庭でも必要だなとひしひしと感じました。
色の感度も個人差がある。
今回は色弱者についてのお話も聞いてきました。身長の高い人、低い人がいるように、色の見え方も人それぞれです。色の見え方の違いは外からは分かりませんが、日本では男性の5%ほどは色弱者とカテゴライズされるそうです。個人的には違うというだけで「強い・弱い」と分けるのは抵抗があるなぁと感じました。
いわゆる健常と呼ばれる多数派の色の見え方をC型と呼び、P型、D型、T型、A型(A型はかなり少数)と遺伝子の違いによって色の見え方には違いがあるということです。
色のシュミレーター。他人の色覚を体験できるアプリが素晴らしい。
講座内でご紹介いただいたアプリがとても良かったです。百聞は一見にしかずで、このアプリで撮影すると、それぞれの型の色の見え方を再現してくれます。どういう風に見えているのか体感できる点はすばらしいです。
カラーペンの違いはこのように見える。
講座中によく売っている蛍光ペンの色の見え方を撮影してみました。びっくりするほど見え方が違うのが分かります。青は比較的変化しないのですが、ピンクはピンクではなくグリーンもグリーンから程遠い色です。ざっくり言うと、赤系、緑系の色の使い方には配慮が必要ということではないでしょうか。今まで何の考えもなくノートに赤で強調したりしていたよな……と思います。
では私達がどうすればいいのかというヒントですが、大切なのは意味のある色の取扱です。普段から赤や緑の色は使いえないということではなく、色で注意や強調を表す時、伝わらない人が一定数いるのだと知っておくことが大切だと思いました。また、色の見分けが難しい場合、明度差を使って見分けをしているケースも多く、同じようなトーンにしないで明るい色と暗い色を隣同士にするなどの配慮は役にたちそうです。
色覚の仕組みなどをもっと知りたい方は、こちらのサイトにくわしく出ています。
色覚の仕組みと呼称 | カラーユニバーサルデザイン(CUD)とは | 北海道カラーユニバーサルデザイン機構