そろそろ2017年も終わろうとしているので、今年読んだ本を振り返っています。本の楽しさは様々ですが、自分の持っていなかった考えに触れて、世の中が違った風に見えるようになる本に出会えた時は本当にワクワクします。
この1年も沢山の本を読みましたが、私の世界観を大きく変えてくれたのは、影山知明さん、小林せかいさん このお二人の本でした。
このお二人は別の業界から飲食業に飛び込んで、どちらも個性的な事業を展開しています。影山さんは、「クルミドコーヒー」というカフェ、小林さんは「未来食堂」という定食屋を営んでいます。
どのような考えでその事業を始めたのか、どんな思いで日々事業を運営しているのか書いた本ですが、そのバックグラウンドに流れているのは、どちらも「贈ることからスタートする経済活動」だったのかなと感じています。
人には「得したい気持ち」と「贈りたい気持ち」が同居している。
影山さんの本では、「贈る」気持ちからスタートする経済活動のことが書かれています。人間には1円でも得したいという消費的(Taker)な人格と、こんなに良いものが受け取って良かったな、誰かにもこの気持ちを渡したい(Giver)という人格の両方が同居しているのだと書かれています。
Takerな人、Giverな人がいるのではなく、一人の人格の中に両方があります。この気づきは本を読まないと生まれないものでした。そして、サービスを設計する際にこの点は意識しておくべきだと思いました。
もしTakerの人格でコーヒーを買うなら、「安いものほどいい。安いならどこで買ってもいい」となります。お金を奪われる、少しでも多く取りたいと思う発想から生まれる消費行動です。得してやった、お金を取られたという感情が出やすくなります。
Giver的人格であれば、「コンビニで買うコーヒーよりも高いけれども、この値段でくつろいで美味しいコーヒーを飲めるなんて、ありがとうって言いたいぐらい(感謝の気持ちを贈りたくなる)」と感じてお金を払います。よく自営業の人の口から、「お金は感謝の1つの形だ」と聞きますが、Giverとしての感情を引き出さないとお金は感謝の別の形にならないのではと思うようになりました。
そして影山さんの「ゆっくり、いそげ」では、Giver的な経済活動の方が、お金のやり取りに加えて幸せな気持ちが交換されているんだよということが書かれていました。
そんなことを意識して眺めると、小林さんの未来食堂の「差し入れ」や「ただめし」というシステムは見知らぬ人からの善意の受贈なんだなと分かります。また昼と夜の定食の出し方が違いによって、昼はスピード、夜は個別化という別の価値が付加されていることに気づきます。
注)「差し入れ」などのシステムについては実際に未来食堂に行った時のブログに書いています。
私も実際に未来食堂に行って、ここに食べにくる人は圧倒的に「ここで食べたい」と思っている人だろうと実感しました。
影山さんも小林さんも事業を通してお客さんとお金をやり取りしているだけではなく、別の価値を受け渡ししているのだという新たな見方が出来るようになりました。
買う、売る、は単純に金銭のやり取りではない。
この本を読むことで、サービスを買うこと、売ることってなんだろう?と思うようになりました。売ったり買ったりは単なるお金のやり取りではなくて、同時に色々な言葉にならないような価値がやり取りされています。
二人の作者は結果として話題になっているお店を運営していますが、どちらも仕事を通して人も自分も幸せになるにはどうしたらいいかを追求している気がします。
まだ慣れていないので、目を凝らさないとすぐ見落としてしまうのですが、そんな新しいものが意識できるようになったのは、このお二人の本のお陰です。
こんな記事も書いています。
Posted from SLPRO X for iPhone.