【書評】パン屋の手紙| 建築家と建主が見せてくれる幸せな働き方 ブーランジェリージン

「パン屋の手紙」という本を読みました。

ニセコのパン屋さんが建築家の中村好文さんに、店舗の設計依頼をお願いする手紙から始まる建築家と建主の往復書簡です。

私が実際のブーランジェリージンに行った時の様子もブログに書いています。

経済的な成功だけでは測れない幸せな働き方

読み進めて、中村さんも建主の神さんもなんて幸せな生き方をされているんだろうと羨ましくなりました。

二人は何度も何度も手紙をやり取りしたり訪ねあったりして、お互いの思いや大切にしている事を確認しながら建設をすすめます。

設計事務所のスタッフや神さん全員で壁の漆喰をぬったり、神さんの息子さんのリクエストで彼のためのツリーハウスを作ったり、ニセコの建築現場を訪れるたびに元フレンチシェフの神さんの作る食事に舌鼓を打ったりと、ただ「家を建てる」行為以上の幸せな時間がそこに流れています。

私はこのブーランジェリージンがある場所も、そのパンの味も知っているので、その景色や味がどんなに贅沢なものか想像がついてしまいます。

結局、中村さんは足しげく北海道に通ううちに神さんと親交が深まり、自称「図々しい親戚のおじさん」並みに食事をしたり泊まったりすることが多くなって、別棟のゲストルーム用の小屋の建築費を半分自分が払うというオチまでついていました。

決して派手でもなくたくさんお金が得られる仕事ではないでしょうが、信条にあった仕事が出来て、お客さんがそれを満足しているのが感じられる「幸せな働き方」をこのお二人から見せてもらった気がします。

印象的だった中村さんの美意識

建設の途中で一度、神さんと中村さんで意思の疎通がうまくいかない場面が出てきます。

神さんから、些細なデザインについてのこの一言から始まります。

「中村さん、もう少し粗末な感じにならないですか?」

何気ない質問だったのですが、中村さんは「粗末な雰囲気に見せかける」という事に引っかかってしまい、このように返事を出します。

機能性や合理性に裏打ちされた建築こそが「美しい」という信念がぼくの中にはあります。

たんなる見栄えのために、作為的なこと、わざとらしいことはしないし、お化粧はしません。精神の形がそのまま建築に表れればそれでよいと思っています。

家を女性に見立てて、健康で姿勢の正しい女性は化粧をしなくてもそれだけで美しい、とも言っています。

ハウスメーカーに頼むのではなく、その方の作品が好きで建築家に頼むのであれば、そんな些細な感覚のズレは後々大きな不満の種になりえます。中村さんは経験からよく分かってらっしゃるんだなぁと思いました。

本当にこのブーランジェリージンは素敵な建物なのですが、その建物に漂う美しさの源はこれなのか、と思わせる一説でした。

建物も、売られているパンも、どちらも自分の仕事を愛している方が作られたことが感じられるブーランジェリージンです。

お近くに行ったら、ぜひ寄ってみてください。

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