『見える学力 見えない学力』(岸本裕史さん:著)読解力の中身ってなんだろう?【書評】

読書猿というサイトがあって、面白いので時々読んでいます。

その中で気になるタイトルがあったので読んでみると、読む力を測るための5つの質問が紹介されていました。

① まさおくんは、キャラメルとあめとでは、キャラメルがすきです。キャラメルとチョコレートでは、チョコレートのほうがすきです。まさおくんの一ばんすきなのは、どれですか。

② りんごとなしでは、りんごが大きく、かきとりんごでは、かきのほうが大きい。では、かきとなしでは、どちらが大きいか。

③ もし、ねずみが犬よりも大きくて、犬がとらより大きいとしたら、ねずみととらでは、どちらが大きいか。

④ ABCDの4つの市がある。AはCより大きく、CはBより小さい。BはAより大きく、DはAのつぎに大きい。4つの市を大きいじゅんに書け。

⑤ フランスの女の子が三人いる。マチルドは、レナールよりかみの毛の色が明るい。また、マチルドは、アンネットより毛がこい。だれのかみの毛が一ばん黒いか。

この質問は、文字という記号を読んで、頭の中で映像化して操作する作業が必要ですが、(1)から順に難易度が上がっていきます(私は4番目が一番難しく思いますが)。

この質問の引用元の本が「見える学力 見えない学力」です。もう少し知りたくなったので読んでみることにしました。

今読むと気になるところもある昔の本ですが・・・。

著者の岸本裕史さんはもうお亡くなりになった方で、あの100マス計算の生みの親です(蔭山先生じゃなかったんですね)。

この本自体も初版が1981年の古い本です。

読み進めると、教師としての岸本さんの洞察力に感心すると同時に、ところどころに気になる表現が散見されます。

例えば

そうです。④をまちがえる子は頭が悪いのです。頭にスモッグがかかっているのです。

などの表現は気になります。その子を励まそうという文脈の中の表現ですし、時代が違うというのも考慮に入れるべきなのかもしれませんが。

その頃は学習障害も知られてはいませんでした。ワーキングメモリに問題を抱えている子やそもそも字を見間違えたり書くのが大変な子にとって100マス計算は辛くてたまらない作業だという認識もなかった時代です。

得るところも多い本なので、気になるところはスルーして読むことにします。

読書で得られる力は何か?

先ほどの例題で分かることは、よくお母さんたちが言う、「うちの子、文章題が全然だめなのよ。」というセリフの真相です。

一つは、普段から文字という記号を見て頭の中で映像化する訓練が出来ていないと、「文章を読み取る」という事が苦手になるということ。

もう一つは、身近な事、生活に即した事は、頭の中で扱いやすいが、課題が複雑になってくると、抽象的なものを頭の中で操作する必要がでてくるという事だと思います。

私など、④のA,Bなどの抽象的な記号を操作するのが苦手で、頭の中だけで処理しようとするとワーキングメモリがフル回転する感じがします。これを紙に書きだして考えると、ワーキングメモリの負担が減ってぐっと楽になります。

やっぱり、ゲームや動画ばっかりはダメなのか・・・と思う。

私は一概にゲームやテレビがダメとは思っていなかったのですが(あまりダメな理由に納得できるものがなかったので)、確かにこの本を読むと、ゲーム、動画ばかり見ていて、結果、字を読む時間が減る弊害について納得しました。

ずーっと、「読書するとどんな力がつくのか?」は気になるテーマだったのですが、かなり納得できる答えが見つかった気がします。

こんな記事も書いています。

 

 

 

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