学力世界一と言われたフィンランドは、読書教育が盛んなことでも知られています。以前、フィンランド・メソッドについて本をお書きになっている北川達夫さんの講演を聞いてもっと知りたいと思っていたところ、たまたまフィンランドの教育について書かれた本を見つけました。
著者の堀内都喜子さんはフィンランドに5年留学した方です。フィンランドについて個人的なエピソードと共に、俯瞰的な情報も含めてどんな国なのか書かれています。
最初にお断りしておこうと思いますが、この本を読んだからフィンランドが学力が高い理由が分かるわけではありません。でも、フィンランドという国について理解を深めたいと思った時にコンパクトにまとまっていて分かりやすく、読んでよかったと思えた本です。
ルクスオミ。読書を通した学習がさかん。
フィンランドでは、時々国家をあげての教育プロジェクトが実施されるそうですが、「ルスクオミ」もその一つ。
- 読書と他教科とのコラボ(読んだ本から絵を描く、調べ学習)
- 読んだ本の冊数を競い合ったり、昇級制度で読書に対するモチベーションをあげる
- 教え合い(上級生が下級生に読み聞かせをするなど生徒同士が教える、教えられる関係から学ぶ)
- 「ハリー・ポッター」などテーマを決めてクイズ大会など、イベントの開催
- 読書訓練(一分間速読や、短い文を読んで内容を人に説明するなどの訓練)
- 作家との交流、図書館設備の充実
ざっと挙げても、こんなにたくさんの施策が行われていたそうです。
最近、私も日本の教育の向かっていく方向として[学び合い」や「複数の教科に渡った問題形式」などのキーワードは耳にする機会が増えてきています。この「フィンランド 豊かさのメソッド」を読んで、そうだ北欧の教育がお手本として取り上げられていたんだった、と改めて思い出しました。
ただ、ここにも書かれていますが、当のフィンランドの人は自分たちが、なぜ「学力世界一」と世界で評価されているか実感がないようですし、フィンランドでお子さんを現地校に通わせていた北川達夫さんのお話でも、九九などは日本の子どもの方が高い習得率だったといいます。
絶対的な情報が少ないのに、フィンランドの教育を「とりあえず真似する」みたいにならなければいいのですが。
もっと具体的で、ライブな情報が知りたい。
教育については、あくまでこの本の一部分で、その他にはフィンランドの福祉や政治、国民性など分かりやすく書かれていて楽しく読みました。
ただ、私はフィンランドの読書教育についてもっと詳しく知れたらなという気持ちがあったので、むしろもっと具体的なことが知りたいなという気持ちが掻き立てられました。
ちょっと心配なのは、フィンランドの教育がなぜ良いのか、私達のように子どもの近くにいる人間の理解が進まないまま新学習指導要領がスタートしてしまわないのかということです。
何か、こう、名称や外側だけが真似をした真似事みたいになってしまわないといいんですけど。
でも、ルスクオミの例を見ただけでもワクワクするので、日本の読書教育に合いそうな所はもっとしっかり取り入れて欲しいと思います。
この本が気になった方への3冊はこちら。
これ1冊でズバッと分かるというものにはまだ出会えてないので、何冊か読むといいかもしれません。
▲もっと詳しくフィンランド・メソッドについて書いています。
フィンランド読解教科書―フィンランド読解メソッド 4つの基本が学べる 日本語翻訳版