私にとっての大舞台だった「ひな祭り寄席」が終わりました。
女性だけで構成された寄席は珍しいとのことで、今回のひな祭り寄席は新聞の地方版一面に載ったので、予想をはるかに超える200人ほどのお客様。会場は立ち見が出るほどの大盛況でした。
会が盛り上がるのは嬉しいかぎりですが、演じることを考えるとどんどん緊張してきます。
ほぼ初心者の自分の落語を聞いてもらうなんて申し訳ないなと思いつつ、それでも今の自分の精一杯は出せましたし、大きな失敗もせず無事に終えることができました。
英語に興味がないお客様に英語落語をするべきか?
ところで1つ困ったことがありまして、新聞に英語の出し物をする(英語落語をやる)と出てしまったので、引っ込みがつかず悩んでしまいました。
そもそも今回は演者がそれぞれ2つぐらい出し物を用意することになっていて、他に芸もない私は「英語の小咄でもやったらどう?」と言われて、深く考えずに「はぁ、まぁ。」と答えていたのでした。お稽古して自信がなかったら、引っ込めてもいいかなぁぐらいに思っていたのです。
英語学習の手段として英語落語を演じるなら見せて面白いかどうか神経質になる必要は無いのですが、普通に落語を楽しみに来たお客さまに対して、英語だけで数分間の落語をやり通すのは、落語の腕のない私にとっては難易度マックスです。というか、狂気の沙汰。会場の空気を凍らせたらどうしよう?と冷や汗が出てきました。
悩んだ結果、いくつか英語のフレーズを入れた英語あるあるを日本語で話のマクラに持ってきて、なんとか体裁を保ちました。
日本人が安心する英語の発音
その日の打ち上げの席で、落語会の先輩と色々な話をしていた時のこと。
英語落語で有名な桂枝雀さんの英語はいわゆる発音の良い英語ではなく、日本人に耳なじみの良い日本語っぽい英語だからお客様は安心して笑っていられたという話を教えてもらいました。
それを聞いて、すごく納得したんです。
落語では、なるべく話の内容がストンと理解できた方が笑っていただけます。英語落語で言えば、いわゆるネイティブっぽい発音になったり、難しい言い回しが出てくると一瞬「?」となってしまったり、違和感に気を取られてしまいます。もちろんお客様の興味の持ち方やどれくらい普段英語を聞いているかにもよりますが、笑ってもらうことを目的にすると、一つハードルが上がります。
英語落語の本を書いている大島希巳江さんも似たようなことを言われていて、ネイティブに向けて英語落語をする時も同じで、あまり発音がいいと、「この人は日本人なのにどうしてこんなに英語が上手いんだろう?」とそっちに気を取られてしまうらしいです。
「日本人の顔をして、着物を着た私が英語落語を演じ始めると、お客さんたちは一瞬『えっ!?』という顔になるんです。私の口から、いかにも日本人らしい英語が出てくるのを期待しているのに、どうしてアメリカ英語なの? と不自然に思うらしいんですね。その最初の『!?』という戸惑いや驚きが邪魔をして、お客さんの笑いにブレーキをかけてしまうことがあるんですね。だから最近はアメリカ英語になり過ぎないように、私自身の英語を話すように心がけています」
引用元:プロが薦める勉強法 File#09 大島希巳江さん|アルク
英語を教える身としては、あまりジャパニーズイングリッシュにしたくない気持ちもあるのですが、場合によってはお客様にとって分かりやすい英語にするのは必要なんだろうと思います。
とりあえず、クッキリはっきり英語を発音するというのが、どんな時も大切だと改めて思った経験でした。
▲大島さんが著者が実際に英語落語の「マクラ」で話して大ウケだったジョーク集だそうです。
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