英語で「メンバー(member)」「シング(sing)」「ペン(pen)」と書いた時、同じ「ン」なのにmと書いたり、ngと書いたりnと書いたりしますよね。「英語は音の通りに書けなくて嫌だ」と思ったことはありませんか?
(singのnはネイティブにとってはnというより、ngのワンセットで一つの音として認識されています)
文字と発音の関係を知れば、この3つの英単語は文字と音とがキチンと対応しているのが分かります。
日本人は4種類の音を全部1つの「ン」だと思っているから、問題が起こる。
さっきの3つの単語に加えて「返事(へんじ)」の「ン」も加えて日本語での4つの「ン」について考えます。
実は「メンバー」「シング」「ペン」「ヘンジ」の「ン」は全部同じ表記ですが、発音としては4つの違う音です。
日本人の頭の中の「ン」のラベルがついた音の箱には、4つの違う音が入っていて、それを一つの音だと思っている。
それに気がつけば、ぐっと英語を発音したり、読み書きするのが楽になります。
(日本語で「ン」と表記する音はもっと細かく分けることも出来ますが、今回は分かりやすく4つとカウントします)
4つの「ン」について説明します。
- 「昆布(コンブ)」など、パ行、バ行、マ行の前の「ン」は両唇をくっつけた音です。英語でmの音に当たります。
- 「案外(アンガイ)」などカ行、ガ行の前の「ン」は喉の奥で出す音です。軟口蓋と舌の奥で作る音で、英語のngの音に当たります。
- 「ペン」「ミカン」などの語末の「ン」は、[N]の音と思って下さい。ngよりさらに喉の奥で作る音で、日本人に「ン」の一文字だけ見せると、この音で「ン」と言います。
- 「安打(アンダ)」「返事(ヘンジ)」などタ行、ダ行、ザ行、ナ行の前の「ン」は、上歯茎に舌をくっつけて、鼻から息を出す音です。口はぴったりと閉めません。英語のnの音に当たります。
日本人が持っている「ン」の箱から、[m][ng][N][n]の4つの箱に音を振り分けると、ぐっと英語が楽になります。
なお、3番めの語尾の「ン」=Nの音は英語にない音ですので、3と4はまとめて英語ではnの音なんだと考えると上手くいくようです(pen pencilは英語ではnの音で発音する)。
頭の中に4つの音の箱を作ったら、英語と対応させます。
頭に4つの音の箱を作ったら、その音を使って英語を発音すれば上手くいきます。英語でmと綴ってあったら、mの音、ngとあったらng、nとあったらnの音を出します。
- member (mは両唇が閉まっているはず)
- sing(ngはングとハッキリ言わない。ンが大切でグは喉奥で小さくあるかないかの音)
- pen(舌先は上歯茎に触っていて、鼻から抜ける音。ペヌと言ってるつもりでも良いくらい)
語尾の「ン=N」の音の箱は日本語用です。英語には必要ありません。
おまけ:問題をややこしくするNの存在と個人差。
三番目のN(語尾の「ン」)の音は、混乱の元になりやすいので注意が必要です。
まず、発音記号で[N]と[n]はちがう音だという事です。参考になりそうなリンクを置いておきます。
もう一つ、日本人に「ン」だけ見せると「語尾のン=N」の音を発音すると書きましたが、日本人が単語をゆっくり発音すると、mもngもnも「語尾のン=N」の音に変わってしまいます。
「昆布」のンは単語で言うとmの音を使うのに、注意深く「コ・ン・ブ」と一音ずつ区切って言うと無意識にNの音に変わります。
また、地方や個人のクセで4つの「ン」の使い方が多少違う時もあります。
教える時には。
今まで、幾つかのフォニックスの研修で日本語の「ン」について習ったのですが、最初は自分が1つの音だと思っていた「ン」に、4種の音を使っていた事を実感するだけで精一杯です。自分にとっては新しい発見なので、それ自体に気を取られてしまうのです。
研修が終わった後は、「いい事を聞いたな」と思っているのですが、いつも何の為に「日本語のンは一つではない」と習ったのか思い出せないという事が続きました。それだけ、この「ン」の話は印象に残りやすいとも言えますが、活用できなければ意味がありません。
自分が教える時には、相手が英語のm,ng,nをキチンと分けて言える、読めるようになるのが目標なので、先に英語の音としてm,ng,nを教えた後に、定着した頃を見計らって、「実は、日本語のンは・・・」と教えた方が理解が深まるような気がしています。
ともあれ、英語を勉強している人は、この事を知っておくと「ン」に関する英語のミスが減ると思います。