今はインターネットにアクセスすると世界中の情報が手に入るように思います。それでも、まだまだ手に入らない情報もあるのだなぁと感じたことについて書こうと思います。
北海道陶芸会とオレゴン工芸家協会の交流
先週、英語の通訳ボランティアで、美術展のお手伝いに行っていました。
開かれていたのは、北海道陶芸会の50周年の記念展です。そこには主催の北海道陶芸会と長年交流しているオレゴン工芸家協会の方々が多くいらしていたので、お互いの交流のために何人か英語がわかる人が必要で、たまたま私にもお声をかけていただきました。
熱心に質問するオレゴンの陶芸家さん達
日本や中国、韓国は、世界的にも陶磁器の重要な産地でした。たくさんの技法や焼き方などが発展していて、世界の他の地域からすると学ぶことが多い場所です。
昔のヨーロッパでは素朴な陶器しか作れなくて、王侯貴族は何とかして中国や日本の白くてきめの細かい磁器を自国で作りたいと職人を集めて研究していたほどです。(陶磁器の事はインテリアに関係があるので、ちょこっとだけ勉強してました)
とは言うものの、何でも情報が手に入る現代、アメリカの陶芸家さん達も既に何でも知っているんだろうと思っていました。
ところが私が目の当たりにしたのは、日本の陶芸家さんを捕まえて、熱心に質問をするアメリカの陶芸家さん達でした。
通訳を手伝っていると傾向が分かる。
会場内をぐるぐる回っていると、「ちょっとちょっと」と呼ばれて、アメリカの方から日本の作品に対しての質問を通訳する機会が多くありました。
主に材料は何を使っているのか、釜のどの場所に置いているのか、どんな技法を使っているのか、そんなピンポイントな質問が多かったのですが、会場には質問したアメリカの陶芸家さんの作品も飾ってあったので、後でその方の作品を見ると、なぜそれを聞いていたのか、答え合わせになる事に気づきました。
透かし技法の質問をした方の作品は透かし模様が入っているといった具合です。自分の作陶のヒントになることを聞いていたんですね。
その場でしか手に入らない情報もある。
もちろんアメリカの方の知識は深くて、「登り窯」とか「穴窯」とか専門的な言葉でも英語にしなくても分かってくださる事が多くて助かったのですが、それでも作者に直接質問できる機会が貴重だというのは、側で見ていてよく分かりました。
些細な事に思える情報も、すごく参考になったのか「へーーー!」とか「なるほど!」とか思ってらっしゃるのが目の輝きから見てとれます。
質問をした方は、アメリカに帰って、それをヒントにまた新しい作品を作るのかも⁈と思うと、文化の伝播に立ち会っているような気がしてドキドキしました。
見ること、感じること、ライブなことって大事。
会期中には何度か、作家さんが、目の前で陶器を作る過程を見せるワークショップがありました。
私も一緒に見せてもらっていましたが、目の前で制作過程を見ると、その後の作品の見え方がぐっと変わります。
作家さんによっては3Dのソフトを使っていたり、気が遠くなりそうに手がかかる作業をしていたり、ただ作品を見ているだけでは気がつかなかった事に、私も感心したり驚いたり。
その場には多くの作家さん達がいて、色々な質問も飛び交っていました。
きっとそれぞれの方が刺激を受けて、自分の作品作りも少し変わるのかもしれません。
何にしてもそうだけれど、こうやって人って情報をやり取りして影響しあって、色々な事を進化させてきたのだと思います。
YouTubeやブログや本も大事だけど、やっぱり双方向の情報交換って刺激的だし、まだまだ大切だなと感じた数日間でした。