文字を読むためには、目で見た記号(文字)を頭の中で音に変換できなければなりません。
視覚的な記憶が音の記憶と紐付けされていて、視覚情報と音声情報がセットになっているからこそ出来ることです。
sの蛇のようにくねった形を見て、[es](エス)または [s](ス)という音が頭に浮かんではじめてsの入った単語が音読できます。
この目から入ってくる記号を音に変換するのが、あっという間に出来る子どももいれば、なかなか上手くいかない場合もあります。ただ、読み書きが出来るようになるにはとても大切な力です。
といっても、文章で伝えるのはとても難しいなぁと思っていたら、ちょうど文字を覚え始めたばかりの5歳のお子さんがいらっしゃったので、保護者の方にお願いして、スムーズに文字と音をつないでいる例として、動画を撮らせていただきました。
文字という記号を見て、音に変換できている状態はこんな感じ。
このお子さんは、字を読むのが楽しくて、少し大人の助けはありましたが、自分でどんどんアルファベットの読み方を覚えてしまっていました。文字と音をつなぐ作業はどちらかというと得意なんだと思います。
頭の中でアルファベット順に音を再生しながら、「エイ」なら「エイ」にマッチする記号(A)を、「ビー」なら「ビー」に紐付けられた記号(B)を思い出せているので、不規則に並んでいる記号(文字)の中から音にマッチする形を選んで線で結んでいます。
L、M、のあたりで思い出すのに一瞬迷っています。MとNの形が似ているので、どちらだったかなと考えているのかもしれません。
ほぼ自力で(多少大人の助けはあり)覚えたので、音は母語の日本語の音を転用(英語の音の代わりに日本語の音を使うこと)しています。
英語の発音を知らないので、日本語の音とアルファベットをつないでしまっているという課題はありますが、音と文字がつながっているとは、こんな感じなんだとイメージする助けになればと思います。
アルファベットを読めるようになるのに要する時間は同じではない。
英語の読み書きに苦労しない人や、すでにアルファベットぐらい読めるという大人は、なぜわざわざこんな誰でも出来ることを動画に撮るのだろうと思われるかもしれません。
ですが、実際の英語教室では、このようにあっという間に読み始める子どもさんもいれば、似た文字が見分けづらい子、どんな音だったか思い出しにくい子、順番が分からなくなっている子と様々です。
アルファベットを読めるようになるのに要する時間は同じではありませんし、簡単に出来る人もいれば、そうでない人もいるのです。
英語の読みがなかなか上達しない子どもがいる場合、教える側が、単に「読めない」と考えるのではなくて、細かく分析して対策してみると、少し違うのではないかなと思います。
「形が覚えづらいのか?」「音を思い出せないのか?」「興味が持てない=他のことに気が取られている)」「覚えることが多すぎて混乱している」など、どこで困っているのか観察して、対策を考えるとうまくいく場合もあるのではないかと思うのです。